美しい器がくれた時間
2026/09/14
「今週末までなのですが……」
たまたま仕事でご一緒した方から、展覧会のチケットをいただきました。
「ルーシー・リー展 ―東西をつなぐ優美のうつわ― 」
初めて耳にする名前でした。
「私も行ってきましたが、とてもよかったので、ぜひ」
そう言って手渡されたチケットには、とても美しいターコイズブルーの器の写真。
「見てみたい」
その日はあいにくの雨でしたが、朝から気持ちはワクワクしていました。
会いたかった器は、入口近くにありました。
ライトに照らされ、静かに輝くその姿。
思っていたよりもずっと薄く、器を支える部分からつながるフォルムには、どこかあたたかみがあります。
そして、ブルーは単色ではなく、複雑な色合いが重なった、何とも言えない神秘的な色。
縁に施されたゴールドが、そのブルーにさらに深みを与えていました。
ほかにも、ルーシー・リーが得意とした「掻き落とし」という技法を用いた器や、細い線状の模様が美しい作品など、どれも繊細で美しく、時間を忘れて見入ってしまいました。
時代とともに作品のスタイルは変化していったそうですが、彼女自身のスタイルが確立された円熟期の作品には、特に惹かれました。
気品、繊細さ、優しさ、そしてあたたかさ
展覧会のタイトルにある「優美」という言葉そのものを感じました。
そして、ふと思ったのです。
この美しさは、きっとルーシー・リーという人、そのものなのではないかしら、と。
自分らしい作品を生み出すことができた彼女は、きっと嬉しかったのではないでしょうか。
何十年も時を経て、こうして遠い日本で誰かの心を動かしていることを知ったら、彼女はどんなふうに思うのでしょう。
そんなことを想像しながら作品を眺めていたら、私までまた嬉しくなりました。
「来てよかった」
心からそう思いました。
実は最近、心穏やかでないことが重なり、少し元気をなくしていた私。
そんな私のもとに届いた、思いがけない一枚のチケット。
もしかしたら、神様からのプレゼントだったのかもしれません。
美しいものに出会い、心が動く。
それだけで、人はまた少し前を向けるのですね。
帰る頃には、自然と笑顔が戻っていました。
人との出会いも、きっと同じ。
思いがけないところから届いたご縁が、人生を豊かにしてくれることがあります。
そんな小さな「ご縁」を、これからも大切にしていきたいと思います。